同性婚を考える
どうして同性婚
日本で同性どうしで愛しあうことは自由で、
犯罪にはなりません。
ただし、日本では、法律上の性別が
同じ2人は結婚ができません。
「愛しあうことが自由なら、
別に結婚できなくてもいいじゃない」
と思われるかもしれません。
けれども、結婚できないと困ることが、
実はたくさんあります。
相続
パートナーの死に目に会えなかった、
相続も出来なかった
40年以上同居し、ともに事業経営していた男性どうしのカップル。一方が病に倒れ、遺言なく死亡。亡くなった男性の親族は、パートナーの火葬立会い・財産引き渡し等を拒否。事業もパートナーへの断りなく廃業してしまった。
パートナー男性は親族に対して財産の引き渡しなどを求めて提訴。2020 年 3 月の大阪地裁の判決は、「逝去男性は関係を隠していた。親族は原告男性を、従業員で同居の居候と認識していた。夫婦同様の関係にあると親族が認識していた証拠はない」と原告の訴えを棄却した。
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長年同居していたカップル
原告男性右(左)亡くなった男性(右) -
亡くなった男性の妹により原告男性の持ち物が強制撤去された
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同性カップルは結婚できないため、長く同居していても法的には他人です。共同で家を買おうとしてもローンの都合で共有名義にできなかったり、家業を一緒に経営しても片方だけの資産になる場合があります。もし生計を支える側のパートナーが亡くなったら、他方が法的にも経済的にも脆弱な立場に置かれかねません。また、残されたパートナーは相手の遺族と対立することもあります。その場合、相続により財産が得られないだけでなく、住居から放り出されることもあります。
医療福祉
パートナーが急病でも病室に入れない、
手術同意できない
「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告の一人、佐藤郁夫さんは、病気のため2021 年 1 月に逝去。佐藤さんが倒れたとき、パートナーのよしさんは、救急搬送された佐藤さんに同行し、病院側に佐藤さんのパートナーであると知らせていた。
担当医師による診察の後、医師は待っていたよしさんに病状を説明せず、別室から妹さんに電話をした。容体が急変した時も、佐藤さんの妹さんにしか連絡がいかなかった。

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医療機関は様々な書類の記入や医療行為への同意を家族・親族に求めます。厚生労働省のガイドラインの解説では「家族等とは(中略)法的な意味での親族関係のみを意味せず、より広い範囲の人(親しい友人等)を含みます」※1と説明されていますが、現場の医療機関では、トラブルを避けるために法律上の親族に限ることが多く、同性パートナーの同意を受け入れる医療機関は3割程度に留まるとの調査結果もあります※2。
また、パートナーが認知症を発症し、成年後見制度を使いたくても、一方のパートナーは親族でないので後見開始審判を申し立てることができません。認知症本人の法的な親族との関係が良くないと、制度利用に困難をきたすこともあります。- ※1厚生労働省「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン解説編」(2018年)
- ※2 三部倫子 奈良女子大学准教授「LGBTの患者対応についての看護部長アンケート」(2019年)
福利厚生
急な転勤、パートナーの事情は考慮してもらえず、
手当も無い
同性パートナーと事実婚状態にあった元北海道職員が、道に対して扶養手当の支給と寒冷地手当の増額支給、地方職員共済組合に対して扶養認定の届出をしたところ、いずれもパートナーが元道職員と同性であることを理由に支給・認定されなかった。
このことは憲法が保障する「法の下の平等」に反するとして、元北海道職員は 2021年6月9日、道と地方職員共済組合に損害賠償を求めて提訴。しかし札幌地裁は、いずれの請求も認めなかった。

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同性パートナーに配偶者同様の福利厚生を用意している企業は多くありません。パートナーの引っ越しにも何の手当ても出ません。
LGBTQ+への対応を進める企業も増えていますが、「結婚の平等」の法整備無しに、あらゆる職場が対応するのを期待するのは困難です。職場でのカミングアウトが難しい中、人事も上司もパートナーとの関係を知らず、突然の転勤命令が出たら、パートナーとの交際を続けることができるでしょうか?
親権
パートナーの子が入院し駆けつけたら
「親じゃないですよね?」
「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京原告の小野春さんと西川麻実さんは、長年お互いの子どもをふたりで育ててきた。2016年に小野さんに乳がんが見つかり抗がん剤治療と左胸全摘の手術も経験した。
「“死を身近に感じても、西川に私の子どもに対する権利や義務はありません。そのような状況で、西川に子どもを託していくのかと思うと、死んでも死に切れない思いです。ともに泣いて、笑って、悩んで、喧嘩もして、一緒に子どもを育ててきました。私たちは、家族です。なのに法的には家族として扱われないのです。そして、私たちのような家族は特別ではありません。全国のあらゆる町に暮らしています。無視しないでほしい。いないものにしないでほしいのです。」(小野さん)
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小野春さん(左)と西川麻実さん(右) -
西川さん(左)小野さん(右)の結婚式にはお二人の子どもたちも参列
撮影:中内真紀
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子どもを育てている同性カップルは少なくありません。かつて異性婚していた相手との子どもを育てる、精子提供を受けて授かった子どもを育てるなど、事情はそれぞれです。しかし、男女であれば、結婚し養子縁組をすることで、他方の「連れ子」の親権者になることができますが、同性カップルでは、ふたりで育てていても結婚ができないために片方は親権者になることはできません。
そのため、親権のないほうが保育園や学校で保護者として認められなかったり、子どもが入院した際に病院側に血縁者を連れてくるよう言われ、速やかに病状説明を聞くなどできなかったりという事例も起きています。ともに暮らし、一緒に子を守り育てているのに家族として扱われないという理不尽。子どもの福祉の観点からも大きな問題があります。
税制など
男女の夫婦なら
経済的な支援や特典はいろいろあるのに
犯罪被害者と遺族を支援する目的の給付金が、同性パートナーに支払われなかったケースも。同性パートナーを殺害された男性が、犯罪被害者遺族給付金を申請したものの、認められなかった。制度では給付対象が「事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む」 と規定されているため、事実婚状態の同性パートナーも含むとして提訴。2020年6月、名古屋地裁は、同性カップルについて「婚姻関係と同視し得るとの社会通念が形成されたとはいえない」として、不支給を維持。控訴するも、2022年8月、名古屋高裁でも不支給を維持する判決。現在上告中。

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税法上、同性パートナーは所得税の配偶者控除や配偶者特別控除の対象になりません。経済力が弱い場合でもパートナーの被扶養者になれず、自ら社会保険料を払い続ける必要があります。また、ふたりが病気で治療費がかさんでも医療費合算をすることが認められず、男女の夫婦と比べて医療費控除を受けるのが困難です。また、亡くなったパートナーの遺産を受贈者または生命保険金受取人として受け取ることができても相続税の配偶者控除はなく、遺族年金や国民年金の死亡一時金も受け取れないため、万一の際の生活の保障も不十分です。さらに、民間の生命保険や医療保険をかけたくても、同性パートナーが受取人になれる保険商品は限られているのが現状です。
住宅
賃貸入居も拒否され、
共同ローンも容易に組めず
「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京原告の小野春さんと西川麻実さんは、長年お互いの子どもをふたりで育ててきた。2016年に小野さんに乳がんが見つかり抗がん剤治療と左胸全摘の手術も経験した。
「死を身近に感じても、西川に私の子どもに対する権利や義務はありません。そのような状況で、西川に子どもを託していくのかと思うと、死んでも死に切れない思いです。ともに泣いて、笑って、悩んで、喧嘩もして、一緒に子どもを育ててきました。私たちは、家族です。なのに法的には家族として扱われないのです。」 (小野さん)
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同性カップルの賃貸住宅への入居を拒否するオーナーさんは、依然として多いのが実情です。公営住宅の入居資格では、男女事実婚配偶者までは対象となっても、同性カップルに入居資格を与える自治体はまだ少ないのが現状です。また、住宅を購入する場合に、男女の共働きであれば収入の合算でローンが組めますが、同性カップルの場合は共同ローンが組めないことがほとんど。自治体パートナーシップ制度を利用していれば共同ローンを組める金融機関もありますが、追加費用をかけて公正証書での関係証明が必要とされる場合も多く、共同名義で住宅を所有するのは容易ではありません。このことが相続の問題にもつながっています。
在留
外国人パートナーのビザが切れ、
親と生き別れ
メキシコ在住の日本人男性Yさん。日本では自らの存在を認めてもらえない息苦しさから、若い頃に海外で生きることを選択し、現在、現地で同性パートナーと養子の子ども二人と暮らしている。
日本に住む高齢の両親が心配になり、家族を連れて日本に戻ることを検討したが、夫や子ども達に在留資格が出ない上に日本の家族の世間体も考え、敬遠せざるをえなかった。さらにコロナ禍で帰国がままならぬ中、両親ともに逝去。両親の晩年をともに過ごすことができなかったことを悔いている。

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日本人と外国人のカップルの場合、日本でともに暮らしたくても外国人パートナーの在留資格が大きな壁になります。法務省は 2013年から、双方の国で同性婚が可能な外国人どうしが同性婚をしている場合に限り、そのパートナーにも、特定活動の在留資格を出すルールで運用しています。しかし日本人と外国人のカップルの場合、外国人の本国でふたりが同性婚していたとしても、外国人パートナーに、家族としての在留資格は与えられないのです。そのため、就労・留学等の在留資格が切れた時にパートナーが帰国を余儀なくされたり、そもそも在留資格を得られなかったりします。有能な外国人が日本滞在を諦めたり、日本人がパートナーの国に移り住んでしまったりと、日本にとって人材を逸失する一因ともなっています。最近では、一部の個別事案では「特定活動」のビザが認められるケースも出てきてはいますが、引き続き困難である状況に変わりありません。
法律婚・事実婚(異性間)・同性カップルの比較
法律婚 | 事実婚 (異性間) |
同性 カップル |
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婚姻届 | ◯ | ― | ✕ | |
戸籍 | 同じ戸籍 | 別の戸籍 | 別の戸籍 | |
住民票の記載 | 妻/夫 | 妻(未届) 夫(未届) |
同居人。 縁故者とする自治体も。 (大村市で、夫(未届) とした例はあり) |
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夫婦としての社会的認知 | 〇 | △ | ✕ | |
同居・協力・扶助義務 | ◯ | ◯ | ? | |
法定相続権・遺留分 | ◯ | ✕ | ✕ | |
婚姻費用分担義務 | ◯ | ◯ | ? | |
関係解消時の財産分与請求 | ◯ | ◯ | 否定した裁判例あり | |
貞操義務 (浮気された場合の損害賠償) |
◯ | ◯ | 認められた裁判例あり (最高裁が上告棄却し確定) |
|
配偶者控除(所得税) | ◯ | ✕ | ✕ | |
相続税の税額軽減 | ◯ | ✕ | ✕ | |
配偶者ビザ | ◯ | ✕ | ✕ | |
子どもの親権者 | 共同親権 | 原則母親 (父親に変更すると 母親が親権を失う) |
一方のみ | |
親権者死亡時に残されたパートナーが 子どもの親権者になれるか |
◯ | △ (親権者変更手続必要) |
✕ (遺言で未成年後見人と 指定することは可能) |
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犯罪被害者遺族給付金 | ◯ | ◯ | ◯ (2024年3月26日最高裁判決) |
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社会保険 |
健康保険の扶養家族 |
◯ | ◯ | ? |
公的年金保険の第3号被保険者 |
◯ | ◯ | ? | |
遺族年金 |
◯ | ◯ | ? | |
病院での面会・病状説明・手術同意 | ◯ | △ | △ |