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東京訴訟 原告及び弁護団からのお知らせ 原告佐藤郁夫氏のご逝去について
「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟 原告及び弁護団からのお知らせです。
皆さまに悲しいお知らせがございます。
去る2021年1月18日、「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟の原告の1人である佐藤郁夫さんが逝去されました。
佐藤さんは、同月4日に脳出血で倒れて入院されていましたが、回復かなわず、パートナーのよしさんと妹さんらが見守る中、息を引き取られました。享年61歳でした。
その功績を偲ぶとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
(時節柄、葬儀はご家族のみで執り行われたとのことです。)
佐藤さんは、長年にわたり「ぷれいす東京」においてHIV陽性者の支援やHIV予防啓発活動などに取り組んでこられました。
そして、2019年2月、「結婚の自由をすべての人に」訴訟にパートナーのよしさんとともに原告として参加し、「同性同士が結婚して法的に家族となることは憲法上の権利である」と、同性婚法制化の必要性を広く訴えかけてこられました。
佐藤さんは、この裁判の審理において、法廷でこう述べられました。
「私はHIV以外にも病気を抱えており、寿命はあと10年あるかどうかだろうと覚悟しています。 死ぬまでの間に、パートナーと法律的にきちんと結婚し、本当の意味での夫夫(ふうふ)になれれば、これに過ぎる喜びはありません。天国に逝くのは私の方が先だろうと思っていますが、最期の時は、お互いに夫夫となったパートナーの手を握って、『ありがとう。幸せだった。』と感謝をして天国に向かいたいのです。」
そして、この裁判へ参加した理由について、こうも語られていました。
「同性同士の婚姻が認められることは、私が若いころに持っていた、自分自身に対する否定的な気持ちを、これからの世代の人たちが感じなくてもよい社会にすることなのです。」
若い世代への支援に取り組んできた佐藤さんだからこそ、次世代のためにも世の中を変えなければとの強い想いで、同性婚実現に向けて、裁判を闘い、講演など様々な活動をとおして世の中の理解を促してこられました。
その功績は、永遠に私たちの記憶に留められることでしょう。
いつも穏やかで、広い心をもって人に接し、笑顔が素敵な佐藤さん。
特にパートナーのよしさんとの仲むつまじい様子は、周りをほんわかとした優しい気分にしてくださるものでした。
同性婚法制化は間に合わず、愛するよしさんと法律上も夫夫となって最期を迎えたいという佐藤さんの夢はかないませんでした。
よしさんはじめご家族のご心中は察するにあまりあります。
私たち原告と弁護団も、共に訴訟を闘ってきた大切な仲間を突如失い、計り知れない喪失感を感じています。同性婚実現が間に合わなかったことが悔しくてなりません。
しかし同時に、だからこそ佐藤さんの想いを引き継ぎ、この裁判に全力で取り組んで、社会と国を動かし1日でも早く同性婚法制化を実現しなければならないと、決意を新たにしているところです。
どうぞ皆さま、同性婚実現に向けて引き続きご理解・ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
最後に、改めて、佐藤郁夫さんの安らかなご冥福を心よりお祈り申し上げます。
2021年1月
「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟 原告及び弁護団一同
※ 佐藤さんが「結婚の自由をすべての人に」東京訴訟の第1回期日(2019年4月15日)の審理において行った意見陳述の内容を、こちらにて公開しております。