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【九州】第7回裁判報告!ゆうたさん、法廷でスピーチ
結婚の自由をすべての人に九州弁護団からのお知らせです。
「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟第7回裁判 報告
日 時:2022年2月10日(木)14時00分から
場 所:福岡地方裁判所の第101号法廷
裁判官:上田洋幸裁判官、橋口佳典裁判官、田中悠裁判官
今回から裁判長が交代となったので「弁論の更新」という手続がありました。
・原告側は3通の書類(準備書面17~19)と裏付けとなる証拠を提出しました。
・原告ゆうたさんが法廷でスピーチ(意見陳述)をしました。
ゆうたさんは、「私の人生は、私以外の、多くの人たちの人生に支えられているから、私の人生をより多くの人が幸せになれるように使いたい」と述べ、同性同士が結婚できる社会は、今よりもより多くの人が幸せになれる一方、異性愛者の人たちの人生や、生活や、歴史や、伝統が、今より悪くなることはないことを最初に明言しました。
そして、ゆうたさんは、かつては人生で感じてきた生きづらさを自己責任の問題だと捉えたうえでパートナーとの関係を社会的に許容されるには養子縁組しかないと思っていたこと、しかし本当にそうなのか、日常で異性愛規範を前提としたやりとりが繰り広げられる現状も、同性婚が認められればよいだけではないのか?という問題提起をしました。
また、ゆうたさんとこうぞうさんがカップルとして社会で認められることは、「運」の善し悪しに全ては左右され、「運」ではおよそ解決されないこともあること、偶然にもゆうたさんとこうぞうさんはそれぞれの家族に自然と受け入れられたものの、高齢であるそれぞれの家族のことを思えば、時間が多くは残されていないこと、を語りました。
そして、裁判所に「人を人として尊重する判決」を期待することを述べ、その判決を通じて「不本意に自分を偽ったり、苦しんだり、傷付けるような人が減り、幸せな人が増えることを、心から願います」と語りました。
(全文は、こちらをご覧ください。)
・弁護団側からは、仲地彩子弁護士がスピーチをしました。
九州訴訟を提起してからの2年半の間に、同性婚をめぐる国内の社会事情は変化しました。パートナーシップ制度導入自治体数は26から152に、人口カバー率は約15パーセントから約43パーセントにまで達しました。
国外では、この2年半の間に、新たにコスタリカで同性婚が可能となり、スイス、チリでは同性婚を認める法改正が行われました。
経済界では、同性婚に賛同する企業・団体も提訴直後の46社から現在212社となり、そこには日本を代表する企業も含まれます。政治面でも同性婚への賛否が、国政選挙や自民党総裁選の争点にもなりました。同性婚についての世論調査も「賛成+やや賛成」は64パーセントと反対を大きく上回りました。
司法面では、札幌地裁が、「結婚の自由をすべての人に」訴訟において、違憲判決を言い渡し、同性カップルに婚姻制度が認められていないことを憲法14条の平等原則に違反すると明確に認めました。この判決は原告をはじめとした多くの性的マイノリティを勇気づけました。
このように社会は変わる一方、国は否定的な対応を続けるばかりです。
戦前には婚姻に戸主の同意が必要だったように、1945年までは女性に参政権が認められず相続権も制限もされていたように、かつては常識と思われ、変わることがないと思われた制度であっても、社会の変化に応じて変わりうるものです。国の主張は、憲法上の人権として認められるべき権利の内容が、時代とともに進化してきたという歴史的事実から目を背けています。
原告のみなさんは各々の過去や事情、それに伴う切実な思いを抱えながらこの裁判に臨んでいます。原告が願う社会は、すべての人が「尊厳ある存在」として大切にされる社会であり、それは、私たち一人ひとりの問題でもあります。
そうしたことを述べ、裁判所には、原告らの声が、原告らだけのものではなく、背後にたくさんの当事者の声があることを心にとめ、その声に、「自分自身の問題でもある」として、正面から向き合うことを強く期待するとの意見を述べました。
(全文は、こちらをご覧ください。)
・今回も多くの傍聴希望者が集まり、抽選となりました。今回は10人程度の方が外れてしまい、弁護士会館内のホールでお待ちいただきました。
次回予定:
2022年4月21日(木)14時00分から(第8回口頭弁論) 福岡地方裁判所第101号法廷
原告側から、原告の皆さんの陳述書を提出するとともに、損害論(主には、同性婚が法制化されていないことによって精神的苦痛が多大であること)についての書面を提出する予定です。
次回も傍聴券の配布があると思われますので、13時20分頃までに裁判所に来るつもりでいていただけると安心です。
期日報告会
・福岡県弁護士会館2階大ホールに、50人以上の方々にお集まりいただきました。
・原告まさひろさん、原告こうすけさん、原告こうぞうさん、原告ゆうたさん、弁護団共同代表の石井弁護士、森弁護士が壇上にあがり報告をしました。
・会場からも意見や感想が次々とあがりました。
「ゆうたさんの意見陳述を受けて、はげみになった」
「はやく法制度が実現してほしい」
「パートナーシップ制度がある自治体なら・・・というのではなく日本にいれば安心できるというような状況になってほしい」
参加くださった皆さま、ありがとうございました。
報告会に参加できなかった方は、オンライン報告会をぜひご覧ください。
【本日の裁判のくわしい内容】
原告側提出
令和3年10月31日に行われた衆議院選挙で同性婚について自民党を除く各政党の公約に盛り込まれたこと、平成3年7月21日以降も、国会の審議の中で同性婚について言及されていること、自治体におけるパートナーシップ制度の広がりやファミリーシップ制度の広がりも見られること、各地の弁護士会で同性婚を認めるための法整備等を求める決議が続いていることも、国内の変化として指摘しました。
さらには国外ではスイス、チリで同性婚を認める法案が可決されていることも言及しました。
・前回の裁判(第6回)で被告から提出された書面に対する反論書面です。
・国は「同性間の婚姻ができないことは憲法自体が予定し、かつ許容するものである」と主張していました。これに対し、こちらからは、最高裁が人権について「個人の尊厳や法の下の平等を定める憲法に照らして不断に検討され、吟味されなければならない」と判断していることを指摘したうえで、国がこのような主張を公然と述べること自体が現在の社会情勢や国際社会では非常識であるし、同性婚を望む人々の尊厳を害し、差別を助長する行為だと主張しました。
・国は「同性婚について立法府に広範な裁量が認められる」(同性婚という法制度を作る・作らないかは、国会がある程度自由に決定できる)と主張していました。これに対し、こちらからは、最高裁が「国会の裁量判断により生じた区別が合理的理由のない差別的取り扱いとなるときには憲法14条違反になる」と判断していることをふまえ、同性婚は「個人の尊厳の根幹」にかかわるもので、重大な憲法上保証された権利に関するものであり、さらにそもそも結婚すらできないという入口段階の問題である以上、「合理的理由のない差別」かどうかは厳格に判断されなければならないと主張しました。
・国は「本件規定(※同性婚を認めない民法や戸籍法)は文言上特定の性的指向を有することを理由に婚姻を禁じたりしていないから性的指向について中立」だと主張していました。これに対しこちらかはら、最高裁が「両当事者が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むこと」が婚姻の本質と判断していることをふまえ、異性愛者には婚姻の本質に合致した婚姻制度を用意する一方、同性愛者には婚姻の本質に合致した婚姻制度を用意していないのだから、性的指向に基づく差別でもあることは明白だと主張しました。
差別であることについては、鹿児島大学の大野友也氏(憲法)の意見書にも言及しました。大変わかりやすい意見書ですので、ぜひ大野先生の意見書もご覧ください。国が、大野先生の論文を恣意的に引用したことに対する批判も書かれています。
・前回の裁判(第6回)で被告から提出された書面 のうち、「本件規定は同性愛者にとってスティグマとなるものではない」と主張されていたことに対する反論書面です。
・日高庸晴氏の調査を用い、ゲイやバイセクシュアル男性のいじめ被害経験の割合がかなり高く、また、自殺未遂リスクも異性愛者と比べてレズビアンは3.3倍、 ゲイは2.6倍などと非常に高いことなどから、同性婚を認めない民法や戸籍法が同性愛者等の尊厳を著しく傷つけている事実が数量的に明らかであることを指摘しました。
・また眞野豊氏(糸島の中学で教員をされていました)の陳述書に基づき、同性愛当事者がいかに幼いころから自己肯定感を奪われ、身の置き場のない思いをしていたのか、というスティグマの現実を指摘しました。
ぜひ実際の書面をリンクよりご覧ください。