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【連載】「マリフォー国会 – 同性婚を伝えよう」⑩訴訟原告リレートーク(3)
田中昭全さん、川田有希さん (「結婚の自由をすべての人に」関西訴訟 原告)
僕らは付き合って今年で12年目になります。香川県の三豊市というところでずっと暮らしています。今年の2月4日に婚姻届を三豊市に出してきました。残念ながら不受理ということで、受け取ってもらえませんでした。婚姻届を書くとき、いろんな人が協力してくれて、ずっと僕らの関係を見守ってくれている大事な友達2組に証人になってもらいました。結婚って言ってもなって最初は思ってたんですけど、婚姻届を書く準備をふたりでしていたときにやっぱりうれしいなと思う気持ちがあって、結婚できないのはわかっていたんですけど、出してみて、男女のカップルはこれが普通に受け取られてこれからの人生をいっしょにやっていく契約を国が保障してくれるんだと思ったときに、寂しいなという気持ちがありました。
ふたりで暮らしていく家として、空き家バンクで築40年の家を見つけて買ったんですが、僕ひとりの名義になってるんですよ。僕らは8歳離れていて、彼が年下なので、いつか僕が先に死ぬわけです。家とか僕が持っている財産をそっくり彼に残してあげたいけれど、戸籍上他人のままだとそういうわけにいかない。年をとってからこの問題に向き合うのはしんどいなと思って、42歳なんですけど、40代のうちに向き合っておきたいなという気持ちがあって、原告として訴訟を起こしました。
本当に一刻も早く、国会議員の皆さまにおいては法律を作っていただけたらなと思います。そういう人が香川の三豊市という超ド田舎にいる。僕らだけじゃなくて日本中にこういう人たちがいるということをわかってほしいなと思います。
まさひろさん(「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟 原告)
まさひろと言います。福岡に住んでいまして、ふたりと大きな柴犬1頭で暮らしているんですけど、将来を思い描きたいなと思ったときにパートナーシップ制度があったので、よかったなと思って申請しました。これでふうふだな、ずっといっしょにいられるし、何をするときでも「夫です」「旦那です」でいけると思っていました。
いざ、ふたりの将来を考えたときに、犬もいるので、小さい家で一家団らんという感じで暮らしていきたいなと住宅購入を考えたんですが、ふうふだから共同ローンを組んでふたりの名義にできると思ったら、「いや、できません」と。「どうしてですか、パートナーシップの書類ありますよ」と見せても、「法律上の夫婦かどうかが問題なんですよね」って言われて、最終的には法律なんだなと思い知らされました。
ほかの例では、自動車保険で配偶者特約が使えるんじゃないかと思って、相談する場所に行きまして、「私たちこういうパートナーシップを結んでいるので配偶者特約がついた保険を見せてください」と頼みました。30社ぐらいあるからどれにしようかなと、初めてふうふのような契約ができるなと思ったら、「使えるのはこの2社ですかね」と言われました。「ほかの28社のなかに使いたいのがあるんですけど」と言っても、「法律上の夫婦じゃないと使えないです」と言われて、ちょっとよくわからないな、と。
そういう場面でいつもいつも壁にぶつかることがありまして、「法律上の夫婦になっているかどうか」っていうことなんだな、気持ちがいくら好きでどんなに感情があっても、最終的には第三者から見ると法律上の夫婦じゃないと権利はもらえないんだなと思いました。
原告になるのはすごく勇気がいりました。
同性婚反対の意見を聞くこともありますので、それも真摯に受け止めて、顔を出して丁寧に説明することが今の私にできる一番の努力だなと思って、勇気を振りしぼって原告になりました。
私たちも法律上ふうふになりたいという希望もありますが、私たちだけじゃなくて小学生とか中学生とか、これから先、私たちが経験したことと同じような悩みにぶつかると思うんです。そんなことを考える必要がなければ、受験勉強を頑張れたかもしれないし、入社した後の配偶者とか同性パートナー制度とかを気にせず、就職活動だけに専念できたかもしれない。そんなことに労力を費やして、本領発揮できない社会って嫌だな、と。未来の子どもたちがありのままの姿で安心して自分をさらけ出して生きていけるといいなと思って、原告になりました。
こうすけさん(「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟 原告)
こうすけと申します。私自身は今回の原告のお話を受けるにあたってすごく悩んだことがありました。
私自身が自分のセクシュアリティを周囲にカミングアウトしていない状態だったんです。自分のセクシュアリティを周囲に明かさない、クローゼットという状態で生活していたときは、自分のセクシュアリティがばれないように常にすごく配慮して、好きでもない女性アイドルについて語ったりとか、努力をして生きてきました。
彼と出会って、愛し合って寄り添って生きていければこんなに幸せなことはないなと思っていたんですが、私の父が他界したのをきっかけに、相続の問題など、法律に守られている家族ということが必要だと実感しました。ふたりでこれから暮らしていく上で、絶対に法律的なことは出てくるので、原告になろうと思って、この場にいます。
原告になって、「法律婚という権利を認めてほしい」と記者会見をした次の日、私は自分のことを周囲に言っていなかったので、仕事に行くのにすごく緊張して、何か言われるんじゃないか、もしかして仕事を辞めないといけないんじゃないかと思っていたんですけど、「がんばったね」とか「応援してるよ」とか「え、結婚できないの? 福岡市はパートナーシップ制度があるから結婚できるじゃん」と、会社でも友人からも言ってもらって、10年以上連絡をとっていない友達からも連絡がきて、近所の人にも「見たよ」って言われて、たくさんの人に支えられて応援していただいて、社会って変わってきたんだな、私がこれまで隠してきたのは何だったんだろうと思ったんですが、法律だけは変わらないんですね、今でも。
どんなに周りの人が認めてくれても、民間企業が私たちのことをパートナーとして扱うサービスを提供してくれても、法律が変わらない限りはいざというときには備えがないまま、不安な気持ちで生きていくのはすごく大変なことです。
今日、勇気を振りしぼって、議員の皆さんに申し上げたいのは、一刻も早く法律上も婚姻関係を結べるように私たちに力を貸してください、ということです。
text:萩原まみ photo:谷山廣