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【連載】「マリフォー国会 – 同性婚を伝えよう」⑪宇佐美翔子さん&岡田実穂さん
当事者からのメッセージ(1)
原告以外にも、長くLGBTQ活動に携わってきた当事者がスピーチをしました。
1組は青森在住の宇佐美翔子さんと岡田実穂さんカップル。青森でコミュニティカフェを運営し、LGBTQや性暴力サバイバー、DV被害者ほか、さまざまな困難のなかにある方のサポートと地域団体とのネットワークづくりに尽力なさっています。2014、2015年にはメディア公開のもと、青森市役所に婚姻届を提出しましたが、不受理。宇佐美さんは現在、直腸ガンのステージⅢbで闘病中であることも明らかにして、治療や生活上の問題点などについてSNS等で発信を続けています。
宇佐美翔子さん&岡田実穂さん
婚姻届不受理から5年
まず議員の皆さま、集まってくださってありがとうございます。
そして、この会場に仲間として、ごめん、泣きそう、いらしてくださった皆さまも本当にありがとうございます。
公の場に顔を出して原告として戦ってくださっている皆さん、本当にありがとうございます。私は皆さまが原告になる相談をなさっている頃、ガンだということがわかりました。原告になりたいという思いがありながら、そのタイミングが合わなくて、手術もしなければいけなくなってしまって、皆さまと肩を並べて記者団の前で話をするという機会を得られませんでしたが、2014年に婚姻届を不受理になるとわかった上で初めてふたりで出しに行って、それから5年の月日を経て、今日こうしてこの場に立てることを本当にうれしく思っています。
宇佐美翔子さん
また、女性であるということだけでも大変な議員さんの世界のなかでレズビアンとしてカミングアウトして、国会議員として戦ってこられた尾辻かな子さんにも本当に感謝しております。ありがとうございます。
ガンが発覚して実際にあったこと
私は今、ガンの治療をしています。明日からも抗ガン剤を投与しないといけないんですが、その際、起きたことを皆さんと共有したいと思います。
ガンがわかって最初にするのはいろいろな検査です。ですが、その検査のときに、こういう活動もしていますから、私たちは何が起こるかということを予想していました。「血縁でない人は」と言われる回数がどれぐらいあるかというのを前もってわかった上で、すごく緊張感を持ってガンの宣告を聞きましたので、すぐに自分たちで書類を作って、病院からも文句を言われないように、「あんたたちどういう関係?」って聞かれても、「これです」って出せるように書面を用意していきました。
でも、最初の病院では、「血縁でないと緊急のときに連絡が行かないかもしれない」と言われました。「こんなに書面を出しても、緊急時に連絡がこないかもしれないと言われなければいけないんですか?」と聞いたところ、「そうだ」と。「うちの病院は厚生労働省がどんな通知を出したとしてもそれが守られるという保証はないので、それが不安でしたら違う病院を選ばれたほうがいいかもしれません」とまで言われました。これは別に誇大な表現をしているわけではないです。
左が宇佐美翔子さん 右が岡田実穂さん
私はそのとき、「何もしなければ私はどれぐらい生きられますか?」と聞いたら、「年内だろう」というふうに言われました。その状況で、もう緊急のときに連絡が来ないかもと言われて、もしものときに私たちどうなるの?とそればかり気になってしまって、なかなか治療に専念できずにいました。
そこは大きい病院だったので、ガンの治療については信頼していろいろ治療してほしいと思っていたんですが、やはりそのことがネックになってほかの病院を選びました。
病院や自治体によって異なる対応
ほかの病院に行ったときには、「家族というふうに扱えばいいということですよね?」という一言で済みました。
このように、地域や病院によって、少しの匙加減で、私たちの命、また治療する権利、機会に差があるということを身をもって経験しています。
また、私たち2014年2015年と続けて婚姻届を出したんだけど、それが不受理になって、その後、20数カ所の自治体がパートナーシップ条例とか制度が決まっていくなかで、「青森はまだか」という気持ちになって、最初はどこに決まっても、うわぁ、うれしい、いいね!ってやっていたんだけど、だんだんと「まだ青森はだめなんだ」と思って、これはもしかしたら、「生きる場所を制限されている」ということなのではないかと思いました。
パートナーシップ制度が使えるところに生きる人は使える、それがないところの人には制限がある。私たち、この日本に生きるものとして平等な権利が得られているとは思えない状況だと思っています。青森は田舎に行くと山間部で交通も大変だということもあります。なので、全国どこでも隅々まで行き渡る、そうした保障が必要です。
そのためにも議員の皆さま、お力を貸してください。
原告の皆さんもお辛いこともあるかと思いますが、共に戦う仲間としてがんばっていってほしいと思います。私たちは原告じゃないけど、ずっと隣にいて戦っているつもりですから、どうかがんばりましょう。
この命の話はどうか急いで決めてください、私が死ぬ前に。どうか頼みます。
text:萩原まみ photo:谷山廣