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【九州】第6回裁判報告!ミコさん、法廷でスピーチ
結婚の自由をすべての人に九州弁護団からのお知らせです。
「結婚の自由をすべての人に」九州訴訟第6回裁判 報告
日 時:2021年11月15日(月)14時00分から
場 所:福岡地方裁判所の第101号法廷
裁判官:立川毅裁判官、橋口佳典裁判官、田中悠裁判官
・原告側は3通の書類(準備書面14~16)と裏付けとなる証拠を提出しました。
・被告(国)は、「準備書面4」と裏付けとなる証拠を提出しました。
・原告ミコさんが法廷でスピーチ(意見陳述)をしました。
原告ミコさんは原告ココさんの出身国で法律婚をし、帰国し、一緒に子育てをしています。お子さんのために詳細を明かすことはできず、匿名で訴訟に参加しています。おふたりが信頼し協力し合って暮らしてきたこと、病気やけがのためにココさんが働けなくなったときの在留資格の不安などを述べ、「当事者として隠れて生きていくのではなく、たとえ匿名であっても、私達の存在を伝えることが大切」とお話をしました。
※プライバシー保護のため意見陳述書はcall4にはあがっておりません。
19世紀末、同性愛を病理化する言説が日本に輸入されて以降、異性愛が、正常で、自然で、原則である一方、同性愛は、異常で、不自然で、変態であり、病気とされるようになりました。
日本の著明な民法学者の中川善之助も「学問を妻とするとか、書籍を配偶者とするとかいふのが一片の比喩に過ぎなく、真の婚姻意思とは見られないのと全く同様に、同性間の婚姻といふ如きことが婚姻的法律要件として否認されなければならない」と同性カップル間の結婚に向けた意思を差別的に否定していました。
しかし、医学的科学的知見は完全に転換しました。1992年に世界保健機構(WHO)の疾病分類(ICD-10)で同性愛は精神疾患ではなくなりました。1995年に厚労省もこれを採用しました。また、1994年、府中青年の家事件東京地裁判決でも、同性愛と異性愛はいずれも人の性的指向の一つであり人間の性のあり方として平等とされると判示され、控訴審判決も同性愛者の権利、利益を擁護することが行政の責務だと判示しました。これらは、以降の、国や自治体の行政施策の基盤となりました。
特に、2015年以降は、飛躍的に自治体や企業で取り組みが進みます。しかし、自治体パートナーシップ制度の普及や同性婚への賛同など企業での取組みの広がりなど、社会の変化が進んでいながらも国会では法制化が進んでいません。
そうしたことを述べ、裁判所には、同性愛を精神病とする誤った科学的医学的知見を信奉するかのように、同性婚を想定外をし続けることなく,変化を踏まえて憲法を解釈し、判断してほしいと訴えました。
(詳しくは、こちらをご覧ください。)
・60人以上の傍聴希望者が集まり、抽選となりました(今回は51人が当選しました)。抽選に外れた方には、弁護士会館内のホールでお待ちいただきました。
次回予定:
2022年2月10日(木)14時00分から(第7回口頭弁論) 福岡地方裁判所第101号法廷
原告側からさらに追加の法的な主張が記載された書面を提出する予定です。
期日報告会
・福岡県弁護士会館2階大ホールに、60人以上の方々にお集まりいただきました。
・原告まさひろさん、原告こうすけさん、原告こうぞうさん、原告ゆうたさん、弁護団共同代表の石井弁護士、森弁護士が壇上にあがり報告をしました。
・会場からも質問や意見が次々とあがりました。
「国は、『婚姻を認める範囲は民主的プロセスに委ねるべき』とあるがどうなのか」
「政治、はやくなんとかしてほしい」
「原告ミコさんから具体的な不利益、心配事を聞いて、そうなのかなるほど思って聞いた。困りごとをよりわかりやすく伝えていきたい」
【本日の裁判のくわしい内容】
原告側提出
〇原告ら第14準備書面
外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限って国家賠償法が適用されます(国賠法6条)
前回、被告から保証があるかを問う書面(被告第3準備書面)が提出されたので、保証があることを裏付ける証拠や主張の書面を出しました。(※プライバシー保護の関係上call4には掲載していません)
国会と法務大臣が立法を怠っていることを国内外の動向を紹介してさらに主張しています。地方自治体パートナーシップ制度が10月11日時点で130自治体を超えて人口カバー率が4割を超えたこと、自民党総裁選でも同性婚の法制化が争点になったことを書いています(衆院選については次回提出予定です)
同性愛に対する医学的、科学的知見はすっかり変わり、社会も変化しているので、憲法解釈もそのことを踏まえて行うべきとの主張をしています。今回の森あい弁護士による代理人意見陳述もこの書面の内容に基づき、行いました。
(昔の知見)
・同性愛は精神病として扱われていました
・日本の著明な民法学者の見解
「学問を妻とするとか、書籍を配偶者とするとかいふのが一片の比喩に過ぎなく、真の婚姻意思とは見られないのと全く同様に、同性間の婚姻といふ如きことが婚姻的法律要件として否認されなければならない」(1942年中川善之助。戦後1958年にも同様の記述あり。)
・文部省「生徒の問題行動に関する基礎資料」(1985)
「IV 性非行
この同性愛は、アメリカなどでの市民権獲得の運動もみられるが、一般的に言って健全な異性愛の発達を阻害するおそれがあり、また社会的にも、健全な社会道徳に反し、性の秩序を乱す行為となり得るもので、現代社会にあっても是認されるものではないであろう。」
↓
(現在の知見)
・1992年 世界保健機構(WHO)が「同性愛」の分類名を削除した国際疾病分類(ICD-10)を発刊。
「性的指向それ自体は障害とみなされない」
・1995年 厚生省がWHOのこのICD-10を採用。日本精神神経学会も、学会としてこれを尊重することを明らかに。
↓
同性愛を精神病とする誤った科学的、医学的知見は、国によっても、学会によっても、完全に否定されました。そして、国、地方自治体、企業の取組み、また、人々の意識も大きく変わりました。
(結論)
この裁判で問題となっている憲法の諸条文(13条、14条1項、24条)の解釈は、これらの変化、とりわけ、同性婚を想定外としてきた科学的、医学的根拠が完全にその正当性を失ったことを考慮してなされなければなりません。
国は、異性婚を定め、同性婚を定めない民法及び戸籍法の規定が、憲法に違反しないとして、次の4点の理由から反論しています
①憲法24条1項が「両性」と規定しているため、本件規定は憲法24条に違反しない
②憲法13条は、同性婚という法制度の創設を国家に求める権利まで保障するものではない
③憲法24条が異性のみを対象としているため、差異が生じるのは当然で、本件規定は憲法14条に違反しない
④同性婚を認めるかどうかは立法府に広範な裁量があるため、立法措置をとっていないことは憲法14条に違反しない
「婚姻を認める範囲は民主的プロセスに委ねるべき」
「同性と結婚できないという事態は間接的な結果にすぎない」
「具体的な法制度で認められていない」
「婚姻は生殖と子の養育を目的とする制度」
「同性間の人的結合には異性間と同視しうる社会的な承認が存在しない」
→ 原告側からまた再反論します。再反論は、次回の裁判で提出予定です。