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2023.12.04

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【東京第二次訴訟】第10回口頭弁論期日(尋問)および報告会レポート(2023年11月30日)

「結婚の自由をすべての人に」東京第二次訴訟の第10回口頭弁論期日(尋問期日)が行われましたので、ご報告いたします。

東京高等裁判所前で入廷行動をする「結婚の自由をすべての人に」東京第二次訴訟の原告らと弁護団員

☑️ 日時:2023年11月30日 午前10時30分から午後4時30分
☑️ 場所:東京地方裁判所103号法廷
☑️ 裁判官:飛澤知行裁判長、金田健児裁判官、川本涼平裁判官
(民事44部甲合議1A係)
☑️ 出席:原告8名、原告ら訴訟代理人約20名、被告国指定代理人3名

【第10回口頭弁論期日の内容】

1 書面の陳述及び証拠の提出

本日の期日において、原告らは、期日前に提出していた第29~36準備書面(主張書面)を陳述しました。
また、証拠として、甲A461~591号証、甲B3~5の3号証、甲C3~7号証、甲D3~7号証、E3号証を提出しました。

2 当事者尋問・証人尋問

本日の期日では、原告らに対する当事者尋問と、原告家族1名の証人尋問が実施されました。
以下、尋問のハイライトを尋問者ごとにまとめました。

⑴ 鳩貝啓美さん

鳩貝さんの尋問の前半では、小学生のころに女性に恋愛感情が向くということを自覚してから、28歳のときに自分のセクシュアリティを受け入れるに至るまでの間に抱き続けてきた、さまざまな不安や葛藤についてを中心にお話しいただきました。
尋問の後半では、パートナーの河智さんと出会い交際を始めてから、お互いの家族・親族を中心に、二人の関係を理解しまた応援してもらえる関係性を構築するために、様々な工夫・努力を積み重ねてきたエピソードをお話しいただきました。
また、まとめとして、今後も二人の生活を守っていくために、そのような多大な努力を積み重ねないといけないという不平等を解消し、さらに、自分と同じように同性を好きになる若い人たちも、結婚という選択肢を得て、将来に希望を持てる社会にしていくためにも、法律上同性同士の結婚が認められることが必要だという思いを語られました。

⑵ 河智志乃さん

河智さんの尋問の前半では、幼少期の頃から「女の子」として扱われることへの違和感や性的指向に関する悩みを抱えながら、結婚できないことを前提に一人で生きていけるようにと仕事選びや30代前半で家を購入したエピソードなどを話していただきました。
また、河智さん自身がレズビアンであることに距離を感じてきた中、レズビアンコミュニティでの出会いやパートナーの鳩貝さんとの出会いを経て、レズビアンとしての名乗りを引き受けていったこと、鳩貝さんとの関係を含めたセクシュアリティについて家族にカミングアウトから互いの親族どうしの関係構築のために奔走したエピソードをお話ししていただきました。
尋問の後半では、鳩貝さんとの生活の様子や、河智さんの病気が発覚した際に鳩貝さんに家族として助けてもらったエピソードを話していただきました。
そのほか、以前の職場で体験したセクシュアルマイノリティに対する差別・偏見や、住宅ローンの申込みの際に体験した結婚できないことの不利益をお話ししてもらいました。
最後に、鳩貝さんと安心して生きていくために、また、社会の差別や偏見をなくしていくためには事務的に法的効果だけ付与する婚姻類似の別制度ではいけないこと、制度が変われば社会にも浸透して自分たちだけでなく次世代も安心して生きていけることを述べ、現行の婚姻制度を法律上同性どうしも利用できるように間口を広げてほしいと訴えました。

⑶ 山縣真矢さん

山縣さんの尋問の前半では、御自身のセクシュアリティに気がつき、それを受け止めるようになるまでの過程、そして自身がゲイであることを確信した後に「結婚」を自分の人生とは無縁のものと意識の外に置くようになってしまっていたことをお話しいただくとともに、パートナーの方との出会いや、二人の初旅行の思い出、山縣さんからパートナーの方に手編みのマフラーをプレゼントした時のことなどの心温まるエピソードをお話頂き、山縣さんとパートナーの方が、交際を始めて25年になる現在でも、「ふうふ」として法律上異性のカップルと変わるところのない日常を営んでおられることをお話しいただきました。
尋問の後半では、パートナーの方と結婚できないことによってこれまで受けてきた具体的な不利益や、今後も付きまとう不安についてお話を頂きました。また、これまで言い出せなかった自身のセクシュアリティをお父様にカミングアウトした時のこと、カミングアウト後の山縣さんとお父様の関係性の変化についても語っていただきました。
そして、尋問のまとめでは、これまでプライドパレードの運営に携わり、カミングアウト後のお父様との関係の変化を体験してきた御自身の半生を踏まえ、一度限りの人生を差別されたまま終えたくない、そして、婚姻の平等が実現すれば、若い世代のセクシュアルマイノリティの方々の人生のスタートラインが大きく変わること、御自身がゲイとして生きてきた矜持/プライドとして、結婚の平等を実現したい、裁判所には人権の砦として多くの人の希望となる判決を望むという思いを語られました。

⑷ 一橋 穂さん

尋問の前半では、幼少期から性別や身体への違和を感じていたこと、自身がトランスジェンダーであると気付き理解したときのことについて、お話いただきました。一橋さんは、自分の身体への強い違和から、時に自傷的行為をしてしまうこともあったそうです。パートナーの武田さんは、そのような一橋さんに寄り添いながら、「あなたの身体はあなたのたましいが入っている器だから私はあなたの身体を大切にしたい」と一橋さんを思いやる言葉をかけてくれたそうです。一橋さんにとって、武田さんは、一番の理解者であると共に、側で寄り添い支えてくれる、かけがえのないパートナーであることについて、お話しいただきました。
また、武田さんのお子さんとのことについてもお話いただきました。一橋さんは、武田さんのお子さんとも良好な家族関係を築き、武田さんと三人で暮らしています。もっとも、武田さんと婚姻できないことで、学校には一橋さんのことを単なる同居人と説明せざるを得ず、学校行事に参加する時は武田さんのお子さんの周囲からの見え方を気にしなければならなかったそうです。一橋さんは、武田さんと婚姻できていれば、一橋さんと武田さんのお子さんとの関係は親子だと簡単に説明ができ、武田さんのお子さんの見え方を気にすることもなく、お子さんの負担も軽減できたと考えているそうです。
尋問の後半では、20年程前にお母様にカミングアウトしたときのこと、お母様との現在の関係についてお話いただきました。カミングアウトした当時、お母様は泣きながら一橋さんのセクシュアリティを否定したそうです。もっとも、お母様は、少しずつ一橋さんのセクシュアリティを理解してくれるようになり、今では、武田さんのことを家族として迎え入れてくれるようになったとのことでした。一橋さんは、お母様が親として、セクシュアルマイノリティでは幸せになれないのではないか、子どもの心配をしたことが、カミングアウト当時の反応に繋がったのではないか、法律上の性別が同じ相手でも婚姻できる法制度であれば、「自分も幸せになれるから大丈夫」とお母様を安心させてやれたのにと、当時のことを振り返りました。一橋さんは尋問の最後を「憲法13条にはすべての人が個人として尊重されると書いてあります。私は裁判官のみなさんがこの言葉どおりの判決を言い渡してくれると信じています。」との言葉で結びました。

⑸ 武田八重さん

武田さんの尋問の前半では、まず、武田さんが自身のセクシュアリティに気がついた時のことについてお話いただきました。具体的には、中学生くらいの頃、法律上の同性と異性とに対して同じように抱く「好き」という気持ちが、ともに恋愛感情であるということに気が付いたこと、しかし、同性を好きになることについては、誰にも話したり相談をすることができなかったことなどをお話されました。武田さんのお話によると、誰にもセクシュアリティを打ち明けることができなかった背景には、当時、同性愛者がテレビの中で異常な人のように扱われていたり、同級生の中でも笑いの対象とされるなど、同性愛者等が偏見や差別、嘲笑の対象とされていたことがあり、それゆえに、カミングアウトをすることにより、仲間外れにされるなどの不利益を受けることへの恐怖があったそうです。また、武田さんは、現在でも、周囲の言動やインターネット上のコメントなどから、差別や偏見を感じ続けており、現在も自身のセクシュアリティについて、ごく限られた人にしか打ち明けられていないことをお話しされました。
また、その他、武田さんと一橋さんとの出会いや、武田さんとそのお子さん、一橋さんの三人が同居をするに至った経緯、その後の三人の生活のことなどについてもお話いただきました。長い年月をともに過ごすうちに、互いに思いやり、支えあえる家族となれたと感じていることについて伝えていただきました。
尋問の後半では、武田さん・一橋さんカップルと武田さんのお子さんの3人の家族が、武田さん・一橋さんのそれぞれの親族とどのように関係を築いておられるかについてと、結婚できないことにより生じている不都合についてお話しいただきました。カナダで結婚した翌年、横浜で披露宴を行なった際には、大勢の家族や友人らに祝福され、夢だった映画『シャル・ウィ・ダンス?』のワンシーンを再現したダンスを一橋さんと踊ったこと、式中に子どもの頃の父との思い出を思い出して嬉しい気持ちを噛み締めたことを語ってくださいました。一方で、この横浜での披露宴の前、2017年に別の業者に結婚パーティーの申し込みを行おうとした際には、親会社の方針で法律上同性どうしのカップルの結婚パーティーは引き受けられないと理不尽に断られる経験をされており、その際の悔しさ、悲しさについても語っていただきました。
尋問の最後には、今の子どもたちや将来の子どもたちが未来に希望を持てるようにとの思いで本件の原告となったと述べ「人権の最後の砦」としての司法の役割を果たしてほしいことを裁判官に訴えかけました。

⑹ 武田さんのお母様

武田さんのお母様には、唯一の証人として出廷していただきました。
「小さい頃から、女は女らしくあれ、などとは言ってこなかった。娘が娘らしく育ってほしいと思っていた」「人を好きになることに、性別は関係ない」とお話しいただきました。
武田さんから一橋さんを紹介された場面では、「結婚したい」とお二人から言われ、「いいよ」とあっさり返したことで、一橋さんから何度も「いいんですか?」と聞き返され、あまのじゃくな気分になって「じゃあだめだよ!」と言って一橋さんを泣かせてしまった、という楽しいエピソードを披露していただき、傍聴席も笑顔になりました。しかし、その直後に、一橋さんの涙の本当の理由について、後になって「私があまりにもあっさりと結婚に賛成したので、嬉しくて泣いたと聞きました」と明かされ、傍聴席でも涙ぐむ方の姿が見られました。
一橋さん・武田さんカップルについて「親から見ても、本当に信頼しあって尊敬し合っている仲のよい夫婦です」と証言していただき、そんな二人が結婚できないことは本当に理不尽であると体験談をもとにお話しいただきました。また、養子縁組やパートナーシップ制度など結婚以外の制度について尋ねられると「夫婦として暮らしているのに、なぜ結婚ではいけないのですか」とご自分のお言葉で力強く語られ、同性どうしの結婚ができるようになると社会が変わってしまうという議論についての考えを質問されると、「なんにも変わらないと思います」と即座に答えてくださいました。
この夏の家族旅行では、一橋さんのために個室の温泉宿を探して手配するなど、お二人への思いに溢れたお母様の明るく素敵なお人柄が伝わってきた尋問でしたが、最後に「私も主人も先は長くありません。この先ずっと娘たちを見守ることはできません。せめて法律で娘たちを守ってほしいのです。」と、娘を思う母としての心情を語られ、涙ぐまれたときには、法廷でも涙ぐむ声が聞かれました。

⑺ ケイさん

尋問後半では、結婚したいほど愛したパートナーとの出会いから別れ、そして本訴訟にかける思いについてお話いただきました。法律上のつながりのある「家族」と、実態は何ら変わりがないにもかかわらず他人かのように扱われる苦しみ、パートナーと別れた後たまたま戸籍を見た際に、20年以上の関係も、法律上の家族でなければ何も形に残らないという事実を突きつけられたことなど、さまざまなご経験を語っていただきました。
そして、パートナーと離別してなお原告として闘い続ける決断をした理由について、「私はこれまでマジョリティの価値観にあわせるために、数え切れないほどの嘘をつかねばならなかった。若い世代には差別をおそれて自分に嘘をついて生きてほしくない。そして、自分と同世代や上の世代の人々も、不安なく安心して残りの人生を送ってほしい。」という切実な思いを訴えていらっしゃいました。

⑻ 藤井美由紀さん

藤井さんの尋問前半では、同性を好きになることに気づくまでの過程と気づいてからの葛藤をお話しいただきました。また、大病を患った福田さんを藤井さんが献身的に支えた話、大病を共に乗り越えた経験から日々の二人の生活を大切にしているお話もありました。
また、尋問後半では、亡くなる間際のお父様の意識がもうろうとしてゆく横で、福田さんとの関係を話そうかどうかと迷ったが結局話すことができなかったという体験に触れながら、「法律上で結婚できれば、難しい説明なしに『私の妻です』と言えばそれだけでわかってもらえる。それでほとんどの人が納得するはずだ」として、法律が変わらないことが社会の理解を阻んでいるし周囲に話すことを難しくしていることを実体験に基いてお話しくださいました。また、勤務先の会社でパートナーシップ制度作りに動いたが、会社のパートナーシップ制度では法律婚の替わりにはならないことをお話しいただきました。
また、ニューヨーク市役所で福田さんと公的な結婚式を挙げた際に、市役所の職員から異性同士のカップルと同様に結婚を祝福され、これまで感じたことのない心の平穏を感じたことをお話しいただきました。
そして最後に、セクシュアルマイノリティは人口の3%~10%程度と言われているが、人口の3%であれば四国に住む人と同じくらいの人が、人口の10%であれば東京都に住む人と同じくらいの人が、同性同士の法律婚が認められることで幸せになれる、と裁判官に語りかけました。

⑼ 福田理恵さん

福田さんの尋問前半では、パートナーの藤井さんと出会う前のさまざまな葛藤についてお話いただきました。幼少期にアメリカで生活していた時に感じたこと、女性を好きだと気づいた時、「女性を好きになることは異常なのではないか」「まずいな」と感じて悩んだこと、「男性を好きになり、結婚できたら」と思いながらも男性と向き合うことができなかったことなどをお話しいただきました。また、セクシュアリティを打ち明けて拒絶された経験などから、家族とも疎遠になり、「母親にだけは話したいと思っていたがとうとう話すことができなかった。それは、大好きな母親にまで拒絶されたら立ち直れないと思ったからだ」とお話しされ、ご存命のお父様についても「父は、連絡をとりあうたびに『みゆきさんによろしくね』と言ってくれるが、それでも私のセクシュアリティのことは打ち明けていない。(法律上結婚できないために)私たちの関係を説明する言葉が無いから、最後の肉親にまで拒絶されたくないと考えてしまう」と心のうちをお話しされていました。
尋問後半では、パートナーである藤井さんとの出会いや現在に至るまでのお話をしていただきました。お二人がそれぞれ誕生日に送り合っているというアルバムの写真は、証拠として裁判所にも提出しています。尋問のなかで、そのアルバムの写真を示してお話を伺いました。裁判官も、お二人の絆を感じたのではないでしょうか。
また、今年の9月から11月に福田さんが仕事でニューヨーク出張に行った際に、当たり前に同性どうしが手を繋いで歩いていて、そのことを誰も気にしていない様子を沢山目にするなどの経験のなかで「なんて生きやすいんだろう」と感じたというお話をしていただきました。一方で、「私はその時はじめて日本では差別されていたんだと実感しました。差別があるから、あからさまな差別を受けたくなくて、だから本当のことを言わずに息をひそめているんだなとわかった」「日本に帰りたくないと思った」と涙ながらにお話しいただきました。
その経験をした福田さんは、藤井さんをニューヨークに呼び、お二人は、11月にニューヨークでご結婚されました。「こんな幸せな気分になるんだ、と思った」とその喜びを法廷でもお話しいただきました。
尋問の最後に「裁判官、私達を見て下さい。私達は、劣っているでしょうか。異性愛者と同じ結婚ができないほど劣っているでしょうか」と顔をあげて裁判官に問いかけた福田さんの言葉はきっと裁判官にも伝わっていると信じています。

⑽ 反対尋問・補充尋問

 被告代理人からの反対尋問及び裁判官からの補充尋問はありませんでした。

3 代理人意見陳述

尋問後、原告ら代理人から、意見陳述が行われました。
意見陳述では、セクシャルマイノリティに対する差別偏見により、セクシュアルマイノリティの方々が自分らしく生きていくことが妨げられていること、現在の婚姻制度がそうしたセクシュアルマイノリティに対する差別偏見を助長する側面があることを踏まえて、これまでの各地裁判決の違憲判断からあと一歩前進して、法律上同性カップルが婚姻できないことは違憲であると判断すべきであることが述べられました。

詳細はこちらをご参照ください。

令和5年11月30日付け原告ら代理人意見陳述要旨(call4.jp)

 

4 今後の予定

【判決期日が決まりました!】

☑️ 日時:2024年3月14日(木)午前10時30分~
☑️ 場所:東京地方裁判所103号法廷

本日の期日で、本訴訟の東京地方裁判所における第一審審理が終わりました(結審)。次はいよいよ判決です!
この判決が、各地で係属中の「結婚の自由をすべての人に」訴訟のうち、いちばん最後の第一審判決となります。ぜひ傍聴にお越しください。一緒に法廷で歴史的な判決を聞きましょう!

 

【期日報告会】

YouTubeとリアルのハイブリッド期日報告会を実施し、生配信をしました。尋問練習のようすをまとめた映像もご覧いただける内容ですので、ぜひアーカイブもご覧ください。

「結婚の自由をすべての人に」東京第二次訴訟 第10回口頭弁論期日(尋問)を終えて報告会に臨む原告および弁護団のみなさん

https://www.youtube.com/embed/TerYOrC2EOA?feature=oembed

☑️ 日 時:2023年11月30日 午後6時00分~
☑️ 登壇者:鳩貝さん、河智さん、山縣さん、藤井さん、福田さん、仲村渠弁護士、沢崎弁護士、三浦弁護士、樋田弁護士


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