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2024.07.19

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【愛知訴訟】「結婚の自由をすべての人に」訴訟 関連裁判(氏の変更許可)のご報告

法的保障の実現に向け一歩前進!

「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟では、愛知県内在住の大野利政さん・鷹見彰一さん(いずれも、訴訟活動上の仮名)カップルが原告(控訴人)として名古屋高等裁判所でたたかっています。

この度、鷹見さんが、名古屋家庭裁判所に申立てをして、戸籍上の氏を大野さんの戸籍上の氏と同一のものに変更する許可を得ました

「結婚の自由をすべての人に」訴訟とは別個の裁判手続きですが、法律上同性カップルの法的保障を実現していくうえで社会的な意義をもつ審判を得ることができましたので、関連する裁判としてご報告いたします(以下、便宜上、訴訟上の仮名のまま説明します)。

 

1.氏の変更許可審判の概要

(1)手続きの経過

氏の変更を希望した背景事情
 
鷹見さん大野さんの生活状況と、二人に生じている支障を整理した図
 
鷹見さんと大野さんの生活実態:
ふうふとしてともに里子を育て生活
 
鷹見さんの生活:
日常生活では「大野」で生活、公的書類は「鷹見」の記載
 
鷹見さんと里子の関係:
鷹見さんのみが里親、関係を示す書類上は「鷹見」として記載
 
大野さんと里子の関係:
法律上のふうふではないため、手続き上は「里親の同居人」
 
周囲の人からの質問例:
「普段の姓と公的書類やクレジットカードの姓が違うのはどうして?」
「姓が違う男性の二人暮らし?どういう関係?」
 
周囲との関係で生じる支障:
・性的指向を詮索されるリスク
・意に沿わない状況で、同性カップルだと打ち明けせざるをえないリスク
・リスクを避けるため、周囲に鷹見さんとの
同居を知られないよう常に注意を払う負担

鷹見さんは、昔から「結婚して夫の姓に変わること」に憧れを持っており、大野さんとの生活を始めてから大野の氏を使用して生活してきました。
他方、大野さんは、普段から性的指向をクローズにして生活しているので、鷹見さんと姓が違うことで「どうして親族関係にない男性どうしで一緒に暮らしているのか?」と詮索をされることに不安を感じ、鷹見さんと暮らしていることを知人らに知られないよう注意を払いながら生活してきました。
そういう二人にとっては、鷹見さんが大野さんの氏になれれば、より幸せで安全な生活を送れます。
2023年9月に里子を迎え、関係を他人に説明する場面が増えたため、鷹見さんの氏の変更に挑むことにしました。

氏の変更の手続きの経過をまとめた図 ・経過 2023年11月 氏の変更許可を求めて家事審判申立て 2024年2月 裁判官による審尋、調査官による調査を実施 2024年3月 「やむを得ない事由」を認め氏の変更を許可する審判 2024年4月 家庭裁判所の許可に関する書類を持参して手続き ・戸籍法が定める氏の変更に必要な要素 「やむを得ない事由」があること、家庭裁判所の許可、役所への届出 (戸籍法107条1項)

家庭裁判所は、氏の変更について戸籍法107条の定める「やむを得ない事由」があるかどうかを審理します。
やむを得ないと判断されれば、許可を受けられます。
2023年11月に申立て、裁判所や調査官の聞き取りを経て、2024年3月に許可を得ました。

(2)裁判所の判断ポイント

名古屋家庭裁判所は、鷹見さん・大野さんおふたりの生活実態と、法律上同性のカップルの法的保護に関する社会情勢を踏まえ、氏の変更に「やむをえない事由」があると判断しました。

裁判所の判断ポイント①二人の具体的な生活実態 ・二人の関係について 「互いに円滑にコミュニケーションをとって協力しながら、 子育てを中心として安定した生活を継続している」 「婚姻し育児をしている異性同士の夫婦と実質的に変わらない生活実態」 「男女が相協力して生活を営む結合としての夫婦と同様」 「婚姻に準じる関係にある」 まとめると、二人の生活実態について丁寧に調査をした上で、男女の夫婦と変わらない家族であると評価した。 ・二人の困りごとについて 「合理的かつ具体的な社会生活上の支障が生じている」と、鷹見さん、大野さんそれぞれに既に現実に支障が生じていると認定。 事情の説明のため、意に沿わない状況で性的指向を打ち明けざるをえない場面があることの不利益などを評価。

裁判所の判断ポイント②同性カップルの法的保護 ・同性カップルの法的保護について ・「婚姻の本質の1つの側面は、親密な関係に基づき永続性を持った生活共同体を構成することにあると解されるところ、この点は、異性カップルと同性カップルとで変わりはない」 ・「諸外国で同性婚その他の同性カップルの公証制度を導入する国が現れている」 ・「我が国においても、同性カップルに一定の法的保護を与える自治体が現れ、国民意識も同性カップルを肯定的に捉える方向に変化しつつある」 この社会情勢を踏まえて 「婚姻に準じる関係にある同性カップルについて、現行法の許す限り、一定程度、異性カップルに対するのと同質の法的保護を与えることは社会通念上も許容されるというべき」

鷹見さん・大野さんおふたりの生活実態が異性夫婦と変わらないこと、そして、法律上同性のカップルに異性夫婦と同質の法的保護を一定程度与えることが社会通念上許容されることを指摘し、氏の変更を許可しました。

2.おふたりのコメント紹介

2024年5月16日(木)にメディア向けに実施されたオンラインでの記者会見にて、鷹見さん・大野さんがお話しされた内容から一部を抜粋し、コメントをご紹介いたします。

鷹見さん:
「私たちは家族だと認めてもらえたことが嬉しい」
「ないものとして生きている人にとってこの決定が勇気を得られるものになれたらと思う。これからも頑張りたい。次につなげたいというのが一番の思い」

大野さん:
「男女の夫婦と変わらないと認めてもらえてうれしい」
「各々の家庭にとって何がいいかという選択ができることが大事。我が家にとってのベストな選択が氏の変更だったというだけで、同じようなカップルもいれば、そうでないカップルもいる。LGBTQ+の当事者は選択肢がない状況に追いやられている状況があるので、ひとつの新しい選択肢が増えたことはよかった」

3.婚姻の平等実現のために

結婚の自由・平等の実現に向けて ・根本的な解決のためには 姓が同じになることで解決できる不利益は…ごく一部 「どういう関係なの?」が詮索にすぎないときは「姓が同じだから何らかの親族関係なんだろうな」と思われるので不必要な詮索へのリスクは軽減できる。 法律上の関係を正確に問われる場面では、引き続き他人のまま →根本解決には、婚姻の平等の実現が必要 ・同じ姓を望むかは様々 鷹見さん、大野さんにとっては、二人とも大野さんの姓になれることが二人にとってより幸せで、より安全な生活を送れる選択肢でした。 でも、カップルにとってベストな選択肢は様々。 重要なのはふうふになることを望む二人に選択肢が生まれることです

婚姻制度から排除されているためにおふたりの生活に生じている不利益のうち、氏の変更で解消できるのはごく一部です。
根本解決のため、これからも「結婚の自由をすべての人に」訴訟へのご支援をどうぞよろしくお願いいたします!


「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟 次回期日

そんな鷹見さん・大野さんが名古屋高等裁判所にてたたかっている「結婚の自由をすべての人に」愛知訴訟 控訴審第3回の期日は下記のとおりです。ぜひ、裁判所での傍聴にて応援してください!

☑️ 日時/2024年6月27日(木)11時00分(第3回口頭弁論)
☑️ 場所/
名古屋高等裁判所 第1号法廷

期日直前の6月15日(土)には、名古屋レインボープライドが開催予定です。
弁護団メンバーはマリフォーブースを運営しつつ、パレードにも参加します。ぜひわたしたちとご一緒にパレードを歩きましょう!

 


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