憲法と同性婚
憲法と同性婚
同性婚ができると憲法違反?
同性婚ができないのが憲法違反?
同性婚は憲法違反だ、という声を聞くことがあります。
そのように考える方は、憲法が「両性の合意」という言葉を使っているので、そこから同性カップルの結婚は禁止されていると考えるようです。
憲法24条1項「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」
本当にこの条文から、同性婚が禁止されていると読み取れるでしょうか。
憲法は、本当にダメなことはダメと言う性格の法です。
たとえば、憲法21条2項の「検閲は、これをしてはならない」、20条1項の「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」がその例です。
憲法は、すべての人が「個人として尊重される」ということを国の根本目標としてかかげ(13条)、そのために大切なことを最高法規である憲法にしっかり書いています。
本当に同性どうしの結婚は認めてはならないと考えているのであれば、正面から「禁止する」「認めない」と規定されているはずです。
でも、同性どうしの結婚を禁止するとはどこにも書いていません。
もう一度憲法24条1項を読んでみてください。読むほどに、なんだかとても前向きで私たちの背中を押してくれる力を感じませんか?
それもそのはずです。日本でも1947年まで施行されていた旧民法では、家制度のもと、結婚には当事者の意思だけでなく、 戸主(「こしゅ」と読みます。その家で一番えらいとされている人です)による同意も必要とされていました。
これを廃止し、女性は財産を持てないなど女性を差別していた家族に関する法制度も改めて男女平等を保障したのが、この憲法24条1項なのです。
憲法が言いたかったのは、「これからは両当事者の合意だけで結婚できるんだよ!」ということなのです。
憲法24条1項の「両性」という言葉から、憲法は同性婚を禁止していると論じるのは、強引でいじわるな「解釈」です。学説も、憲法は同性婚を禁止していないというのが一般的です。
現在の政府見解について
現在、日本政府は「同性婚制度を憲法が禁止している」との見解はとっていません。
この点については、まず、2015年当時法務省民事局民事第一課長の山﨑耕史氏による講演録中に記載があります。山﨑氏は、憲法上の問題であるとは法務省でも簡単に言えることではないと述べ、同性カップルの結婚届の不受理証明に憲法上問題があるという記載はしなくなったと述べています。
「同性婚については、憲法上認められているか認められていないかという議論があります。認められていなければ、法律でも当然に認められないことになります。しかし、他方、憲法は同性婚を否定まではしていないのではないかという見解もあります。もしこの見解が正しいとするならば、法律で同性婚の制度を作っても憲法違反ではないという余地が出てきます。
以前は、このようにして、同性の結婚届が出されてきたときは、不受理証明に憲法上問題があると書いていたこともあったようです。ただ、私が民事第一課の課長になった後は、同性の結婚届が出されたときも市区町村では、そこまで不受理証明に書いていないはずです。
というのは、憲法上の問題云々というのは、恐らく市区町村で論評すること自体もなかなか困難と思われ、もちろん法務省でも容易に言えることでもありません。したがって、ここ最近では、不適法であるということで不受理証明が出されています。少なくとも現行民法が同性婚を前提としていないことは明らかだからです。」
(戸籍時報739号《2016年6月20日発行、日本加除出版株式会社》の当時法務省民事局民事第一課長の山﨑耕史氏による講演録より)
また、逢坂誠二衆議院議員からの「日本国憲法下における同性婚に関する質問」に対する政府回答でもこの点が明確に述べられています(内閣衆質196第257号2018年5月11日)
「御指摘の『不受理証明書』の記載については、現行法令上、同性婚の成立を認めることができないことを踏まえたものであると理解している。すなわち、民法(明治29年法律第89号)や戸籍法(昭和22年法律第224号)において、『夫婦』とは、婚姻の当事者である男である夫及び女である妻を意味しており、同性婚は認められておらず、同性婚をしようとする者の婚姻の届出を受理することはできない。」
このように、政府は、法律上同性どうしのカップルからの結婚届を受理しない理由について憲法24条が同性婚制度を禁止しているからという理由を採用していません。
そして、逢坂議員からの「現在、同性婚は日本国憲法第24条第1項に反し、違憲であると考えているのか」
との質問に対して、政府は、「憲法第24条第1項は、『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立』すると規定しており、当事者双方の性別が同一である婚姻(以下「同性婚」という。)の成立を認めることは想定されていない。
いずれにしても、同性婚を認めるべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えており、『同性婚に必要な法制度の整備を行わないことは不作為ではないか』との御指摘は当たらない。」と回答しています。
単に、「成立を認めることは想定されていない」というだけで、「違憲である」とか、「成立は認められない」などとは述べていません。
また、「結婚の自由をすべての人に」訴訟でも、国は、「想定していない」とは言っても、「違憲である」とか、「成立は認められない」などとは一切主張していません。
「同性婚」を認めないことこそ憲法違反です。
人が人生の途上で人と出会い、パートナーと生活をともにし、結婚しようとすることは、その人がその人らしい人生を送る上でとても重要な選択です。このように、人が「個人として尊重される」(13条)ために特別に重要なことを、憲法は基本的人権として保障しています。
憲法24条1項が「婚姻は両性の合意のみに基いて成立する」と規定したのも、結婚するかどうか、いつ誰とするかを自分で決める権利(結婚をするについての自由)が憲法上の人権だからです。
そして、結婚の自由の大切さは、パートナーが法律上異性であれ、同性であれ何の違いもありません。結婚するかどうか、いつ誰とするかを自分で決めることを、相手が同性であるという理由で否定することは、憲法24条1項が保障する結婚の自由の不当な侵害です。
また、そのように同性カップルか異性カップルかで扱いが異なることは、憲法14条の平等原則に違反する不当な差別的扱いなのです。
同性カップルが結婚できる制度をつくるために憲法改正をする必要は全くありません。憲法ではなく、民法と戸籍法ほか、法律を改正すればよいだけです。
「同性婚」を認めないことこそ憲法違反です。
現行法の規定は憲法24条や憲法14条1項(法の下の平等)に違反するという判決も
結婚の自由をすべての人に訴訟の判決は、2024年3月14日までに7つ出ていますが、同性婚を認めていない現在の民法や戸籍法の規定を合憲だとしたのは、大阪地裁の判決だけです。
そして、特に、札幌高裁判決(2024年3月14日)では、同性婚を認めていないことは、憲法14条1項だけでなく、憲法24条にも違反するとの判決がなされませした。
この判決(判決、判決要旨)や、結婚の自由をすべての人に訴訟のことは、マリフォーの裁判のページをご覧ください。
国会、そして、政府は、札幌高裁判決をはじめとする結婚の自由をすべての人に訴訟の判決で示された司法の判断を重く受け止め、一刻も早く、結婚の平等(同性婚の法制化)を進めるべきです。