同性婚を考える

同性婚を実現するには

代表理事 弁護士 寺原真紀子

お話しする人
弁護士(弁護士法人東京表参道法律会計事務所)。東京大学法学部卒業後、長島・大野・常松法律事務所・メリルリンチ日本証券株式会社などを経て現職。第4回チャンピオン・オブ・チェンジ日本大賞入賞。
なぜ日本では同性婚ができないのですか?

民法の解釈が男女の結婚を前提としているからです。

結婚については「民法」という法律が定めています。民法には「婚姻は、18歳にならなければ、することができない」など、結婚できない場合が定められています。しかし、「男と男、または女と女は、結婚できない」というような同性どうしの結婚を禁止する定めはありません。
民法には「夫婦」という言葉など、結婚が男女を前提として規定されているため、同性婚はできないという解釈が一般的です。残念ながら、法律上同性どうしの2人が婚姻届を出しても受理してもらえません。

どうすれば結婚できるようになりますか?

法律を変えるだけで同性婚が実現できます。

もし日本国憲法が同性婚を禁止しているのであれば、憲法違反の法律を認めるわけにはいきませんから、法律を変えるだけでいいのかが問題になります。
この点、憲法24条1項が「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」と定めていることから、「男と男」や「女と女」の合意は「両性」の合意ではないのでダメと考えられることがあります。
しかし、憲法24条1項が次のような考えから定められたことを考えれば、この考えはおかしなものです。

昔は個人より「家」が大切にされ、「戸主(こしゅ)」というその家で一番えらい人の同意が無いと結婚できませんでした。個人は尊重されず、特に女性はないがしろにされていました。そこで、個人の尊重と男女平等の実現を目的として「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立」と定められたのです。主眼は、両当事者の「合意のみ」に基づいて結婚できるという部分にありました。

また、憲法が定められた1946年当時、同性どうしの結婚は想定されておらず、同性どうしの結婚を禁止する意図がなかったと考えられることからも、憲法24条1項が同性どうしの結婚を禁止するものではないと言えます。
したがって、憲法は同性婚を禁止していないので、憲法ではなく法律を変えるだけで同性婚が実現できます。

憲法と同性婚についてもっとくわしく知りたい方はこちらをご覧ください。

どのように法律を変えれば良いですか?

現行の民法を改正するだけでOKです。

マリフォーでは、法律をどう変えればいいかを具体的に知っていただけるように、民法の改正案(婚姻平等マリフォー法案)を作りました。

婚姻平等のマリフォー法案のとおり、同性どうしの結婚は、民法を改正し、「夫婦」を「婚姻の当事者」にするといった単語の置き換えをすることで基本的には可能です。

同性どうしで結婚できるようにするために、民法に新たな章を設けたり、新たな条文を作る必要はありません。

Marriage Equality Bill

マリフォー法案のポイント
POINT 1

当事者双方の性別にかかわらず結婚できる

「婚姻は、『性別のいかんを問わず、二人の当事者が、』戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」(第 739 条)とし、当事者双方の性別にかかわらず結婚できると明記。

POINT 2

あとは、単語の置き換えを規定するだけ

ほとんどが、性別にかかわりなくするための置き換え規定。今ある婚姻制度をそのまま利用するので、同性カップルの婚姻のために新しい章を作るわけでも、新しい条文を作るわけでもない。

【置き換えの例】
  • 夫婦 ⇒ 婚姻の当事者
  • 父、母 ⇒ 親
  • 夫若しくは妻 ⇒ 婚姻の当事者の一方
POINT 3

養親子であった同性カップルのための特例を設ける

現行民法上、一度養親子関係にあったカップルは、結婚できない。しかし、結婚制度を利用できないことの代替手段として、同性カップルが養子縁組制度を利用することがある。そこで、養子縁組したことのある同性カップルであっても、この法律の施行日から2年間は結婚できる特例を設けた。

1人ひとりは何ができますか?

裁判の応援と国会議員への働きかけです。

法律はどうすれば変えられるのでしょうか。
法律は、国会が作ります。国会議員が法律を変えようと思い、動く必要があります。

国会が法律をなかなか変えてくれないときには裁判をして、法律を変えていないのは国会の職務怠慢だと言ってもらうことがありえます。

結婚の自由をすべての人に訴訟が起こされたのは、同性婚ができるよう法律を変えないのは国会の職務怠慢だと、裁判所に判断してもらうことで国会を動かすためです。
裁判は、札幌、東京、名古屋、大阪、福岡でしています。
行く機会がある方はぜひ裁判を見に行って応援してください。

ただ、裁判の結果が出るには時間がかかりますし、そもそも国会が法律を変えてくれればいいのです。
また、裁判で同性婚ができるよう法律を変えないのは国会の職務怠慢だと判断がされると国会は同性婚ができるよう法律を作らなくてはならなくなりますが、同性婚ができるようになるといってもその中身も問題になります。
同性婚が日本で実現するためには、裁判まかせにせず、賛成する国会議員を増やすことがとても大切です。

賛成する国会議員を増やすにはどうしたらいいですか?

あなたの声を国会議員に届けてください

これには全米での結婚の自由実現に大変力を尽くされたエヴァン・ウォルフソンさんの言葉が大変参考になります。

「家族や愛、また差別がもたらす害悪について、ストーリーを語る人が増えれば増えるほど、多くの人々の心が動かされ、状況を変えられる」

自分自身が結婚したいというストーリーを語れなくても、
結婚したくてもできない友人や家族や同僚が日本にいることをどう思うか、身近にはいなくても同性どうしで結婚できない人が日本にいることについてどう思うか、話せることは誰にもあるはずです。

どこの地域にも国会議員はいます。
地元の国会議員に手紙やメールを出す、何かの機会に会えば、同性婚を実現して欲しいと伝える、誰もにできることがあります。

マリフォー国会メーターで、各国会議員の同性婚についての考え方や事務所の住所など連絡先、SNSが分かります。マリフォー国会メーターを使って声を届け、同性婚ができるようになって欲しい人が本当にいるということを伝えましょう。貴重な一歩をともに踏み出しましょう。

結婚という制度がないことで、愛する人と一緒にいたいという単純なことが叶えられないことすらあります。また、制度さえ変われば人の意識が全て変わるわけではありませんが、制度ができること、制度の変化は人の意識に大きな影響を与えます。

同性婚についてストーリーを共有し、そして、力を合わせて、日本でも同性婚を実現し結婚の自由をみんなのものにしましょう。

同性婚応援のメッセージをくださる国会議員さんもたくさんいます。日本でも、性別を問わず結婚ができようにすること(同性婚の法制化)はきっと実現できます。