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2019.12.16

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【連載】「マリフォー国会 – 同性婚を伝えよう」⑦下山田志帆さん講演

下山田志帆さん(準備中の様子)

下山田志帆さんは、なでしこリーグ2部スフィーダ世田谷FC所属の現役サッカー選手。2019年に女性の恋人がいることを公表後、LGBTとスポーツを軸にさまざまな活動を行ってきました。10月より女性アスリートの力で社会課題解決をめざすRebolt inc.の代表も務めています。

下山田志帆さん(スフィーダ世田谷FC所属サッカー選手/Rebolt inc.代表)

日本で唯一、カミングアウトしている現役スポーツ選手

私は現役の女性サッカー選手で、なでしこリーグ2部のスフィーダ世田谷FCでプレーをしています。その私がなぜ、ここに立ってお話をしているかと言いますと、私自身がセクシュアル・マイノリティのひとりだからです。私には彼女がいます。フリーライターをしている大学の先輩にインタピュー記事を書いてもらいまして、今年の2月にその公開をもって、フルオープン、カミングアウトしています。

私自身は体の性別が女性であることに対してすごく大きな違和感があるわけではないのですが、女性扱いされることがすごく苦手で、ボーイッシュな服装が好きです。恋愛対象は女性です。たまに男性になりたいなと強く思うこともあれば、そうでないときもあって、性自認や性表現がその日によって違うなというふうに自分自身で感じていますし、それが私だなと今は思っています。

下山田志帆さん1

ドイツのサッカーチームのメンバーから受けた衝撃

同性婚が認められていない日本において、法律婚ができないことによって、どんな困難があるのか。私自身もパートナーといっしょに生活をしているのですが、制度に守られることの重要性、必要性をものすごく感じています。ですが、今日は時間の関係上、チームスポーツに身を置いてきた選手のひとりとして感じたことについてお話したいと思います。

私は今年の5月までドイツの田舎町にあるSVメッペンというチームでプレーをしていました。ドイツでは2017年10月に同性婚が実現したので、同年7月にドイツに渡ってすぐのことになります。向こうで、チームメイトにさらりと「男性と女性、どっちが好きなの?」と自然に聞かれたんですよ。私は今でもそのときの衝撃が忘れられないです。それだけセクシュアル・マイノリティの人が特別感なく過ごしている空間がそこにはあったんですね。

ドイツではクリスマスがすごく大事で、チームメイトと監督、スポンサー、ファンが一堂に介してお祝いしようというイベントがあるんです。選手は家族やパートナーを連れてきてもいいんですが、そのとき、同性カップルがクラブ内に1組いて、ほかのチームに同性パートナーがいる選手がいて、フィジカルトレーナーの方も同性婚を間近に控えていました。その人たちも当たり前のようにパートナーを連れてきていたんです。それだけでも衝撃だったんですが、その後に私が受けた衝撃というのが、選手たちが監督やファンに自分の彼女を紹介していて、ストレートの選手たちとそのパートナーたちと「こういうことが幸せだったんだ~」って、すごく幸せそうに語っていたんですよ。その光景を見た日本人の私が何を感じたかというと、セクシュアル・マイノリティの人たちが自分らしく生きている社会は、そこにいる人たちみんなを幸せにするんだなってことでした。

日本女子サッカー界の居心地の良さとその弊害

逆に、日本の話をさせてください。私は十文字高校と慶応義塾大学、その2つの部活のチームに所属していました。ですから、どっぷりと日本のチームスポーツ界に浸かってきた人間です。日本の女子サッカー界には、女性と付き合って男性的役割をする人を表す「メンズ」というワードがあります。それを説明していると長くなってしまうので割愛しますが、そのワードのおかげでストレートの恋愛だけが当たり前じゃないよね、という世界が女子サッカー界にはあります。私自身も女子サッカー界内では自分のことを「メンズ」と表現していますし、あまりにもその存在が当たり前であるおかげで、チームメイトの前ではすごく安心して、自分らしくプレーすることができます。

一見、生きやすそうな女子サッカー界なんですが、実はすごく弊害があると思っています。それはあまりにも女子サッカー界の理解度が高いために、選手たちが社会に出て行ったときにギャップで生きづらさを感じてしまうことです。クラブ側がスポンサーやファンからどういうふうに「メンズ」のことを思われるかわからないと、選手のあるがままの姿を隠そうとしている、そんな現実もあります。これにより、確かにチームの中にいるときは自分らしくいられるのですが、女子サッカー界という枠を飛び越えたときにものすごく生きづらさを感じてしまう選手もいますし、せっかくスポーツを通して培ってきことを社会に還元できていない選手がたくさんいます。

男子スポーツにおけるホモフォビア

サッカーのようにチームスポーツである女性スポーツ界では、そのように男性的役割を担う人たちがいる一方で、男性スポーツ界では今もまだホモフォビアが強く残っていると言われています。大学時代にチームスポーツをしていたゲイの友人と、「家族とチームメイト、どっちがカミングアウトしやすかった?」って話になったんです。私が「チームメイトのほうがカミングアウトしやすかったな」ってポロッと言ったら、彼は「いや、そんなことはない」と。「俺は家族のほうがカミングアウトしやすかったし、チームメイトにカミングアウトなんて絶対できなかった」って言ったんです。それがなぜかというと、男性スポーツ界では男らしい選手のほうが価値が高い、つまりいわゆる女性らしいイメージのあるゲイであることがバレてしまうと、選手としての価値が下がるような気がした、と。しかも、日常からホモとか差別用語を使ってのイジリがあったので、「もし自分がゲイであることがばれてしまったらチームにいられなくなって、選手生命が終わってしまうと思った」と。このように日本のスポーツ選手のなかには、本来自分らしくいられるはずの場所で自分を押し殺して生きているアスリートがまだまだたくさんいるということです。

2020年、オリパラに向けて

来年、2020年、東京でオリンピック、パラリンピックが行われますよね。きっとスポーツを通して、日本国民みんながひとつになる、そんな素敵な時間になるんじゃないかなと私は思っています。オリンピック憲章というものがあるのですが、2014年に「性的指向を理由に選手を差別してはいけない」という項目が追加されました。2016年のリオオリンピックでは、カミングアウトした選手が公開プロポーズをする、そんな素敵な場面もありました。2020年を前に東京都でも、「性的指向を理由にした差別の禁止」を条例化しています。国内でもスポーツ場面においてセクシュアル・マイノリティ差別をしてはいけないということが正式に打ち出されています。確かに、憲章や条例で打ち出されてはいますが、日本の現実はどうなのか。事実、日本の現役アスリートのなかで、セクシュアル・マイノリティであるとカミングアウトしているのは私しかいません。多くのアスリートがスポンサーやファンからどういうふうに思われるだろうかと恐れてしまい、ありのままの姿をチームのなかに隠しています。多くのアスリートがチームメイトの目を恐れて、ありのままの姿を自分のなかに押し殺しています。つまり、憲章や条例で差別を禁止するだけでは足りていないんです。どんなことが必要かと言いますと、特別な何かとして隠されて守られるのではなく、セクシュアリティに関係なく人として人間として同じ存在だよね、ということを明確に示す、国レベルで私たちを肯定してくれるものが今まさに必要なんです。

自分らしく胸を張って、彼女と生きていきたい

ドイツでは、レズビアンのチームメイトがいました。彼女と将来の話をしていて、私が「将来どうするの?」って聞いたら彼女は「あと2、3年で引退したら、指導者になって、パートナーと結婚するんだよね。たぶん子どもができると思うんだけど、子どもといっしょに地元のクラブを応援しに行って、週末はビールを飲みながら過ごすのが今の夢、目標なんだよね」って言い切ったんですね。日本人の私からしたら、夢のようなライフプランなんです。でも、彼女はきっぱりと言い切るんです。そんな姿を見てものすごくかっこいいなと思ったし、同時にものすごくうらやましかったです。そして、その彼女の姿を見ていて、国が同性婚を認めるということは、その人自身の存在を肯定することになるし、同時に人が自分らしく生きていくことを後押しするものにもなるんだなと感じました。

同性婚とは、制度を変えるだけではない、ということを私は伝えたいです。私が同性婚の実現を望む理由は、もっと胸を張って、自分らしく生きていきたいからです。パートナーといっしょに「自分たちは何も変じゃないよね。いっしょにいていいふたりだよね」と胸を張って生きていきたい。同時に、今はぜんぜん自分らしく社会に溶け込めていないスポーツ選手たちが胸を張ってプレーをして、社会にいる姿を見たいからです。今、生きづらいと思っている人たちがもっと自分らしく生きられるように、そして、その姿を見たまわりの人たちも幸せになれるような社会を望んでいますし、それをいっしょに作っていけたらすごくうれしいなというふうに思っています。


text:萩原まみ photo:谷山廣


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